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1996年7月7日(日)、
群馬県太田市高林東町のパチンコ店「パチトピア」」(現・パーラーフレンド)で
群馬県邑楽郡大泉町に住む横山保雄さん(当時29歳)・光子さん(当時30歳)夫妻の
長女・横山ゆかりちゃん(当時4歳)が何者かに連れ去られ
行方不明になった事件が発生してから、今日で丸21年が経つ。
事件の詳細は下記URLを参照のこと。
横山ゆかりちゃん行方不明事件
(事件サイト「オワリナキアクム 又ハ捻ジ曲ゲラレタ怒リ~」様より)
さて、今回と次回は、これまでの時系列を無視し、趣向を変えて、
日本テレビ報道局の清水潔記者が、同局のテレビ番組『真相報道バンキシャ!』や、
新潮社『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で
長年に渡り主張を続けている
【横山ゆかりちゃん誘拐事件の犯人=足利事件の真犯人】説
が、如何に、
“嘘・デタラメだらけ”のトンデモ説
であるのかを論じる。
結論から先に書くと、要旨は以下の3点である。
★目撃証言者たちの供述が、
再審無罪になった菅家利和氏の
【逮捕前】と【釈放後】で
“大きく食い違っている”
★目撃証言者たちの供述内容と、
【警察犬】による追跡捜査の内容が
“大きく食い違っている”
★日本テレビ報道局の清水潔氏は、
栃木県と群馬県の両事件の真相に
迫る上で極めて重要な上記の情報を
全く以って完全に【隠蔽】した!!
清水潔『殺人犯はそこにいる』によると、
そもそも、清水氏が栃木県足利市で起きた3つの幼女殺人
・1979年8月3日(金) 福島万弥ちゃん殺害事件(当時5歳。遺体発見は同9日)
・1984年11月17日(土) 長谷部有美ちゃん殺害事件(当時5歳。遺体発見は1986年3月8日)
・1990年5月12日(土) 松田真実ちゃん殺害事件(当時4歳。遺体発見は同13日)
に関心を抱いたのは、1996年7月7日(日)に群馬県太田市のパチンコ店で発生した
「横山ゆかりちゃん(当時4歳)誘拐事件」がきっかけであった。
2007年6月、日本テレビ報道局の杉本敏也社会部長(現・報道局長)に呼び出され、
“日本を動かす”ほどの「報道特番」を製作することを告げられた清水氏は、
杉本氏から「未解決事件」をテーマにしてはどうかと勧められ、
「どうせやるなら時効が近い事件にしよう」ということで
「横山ゆかりちゃん誘拐事件」を調査することにしたという。
それで、群馬県太田市の横山ゆかりちゃん事件について調べ始めて間も無く、
清水氏は、隣接する栃木県足利市で、1979年から1990年にかけて
3件もの幼女殺人事件が起きていることに気付いた。
更には、1987年9月15日(火)に群馬県尾島町(当時)で発生した
「大沢朋子ちゃん殺害事件」(当時8歳。遺体発見は1988年11月27日)も、
ゆかりちゃん事件と同じく未だに未解決であることも知った。
そして、これらの事件には、
・幼女を狙った犯罪である。
・三件の誘拐現場はパチンコ店。
・三件の遺体発見現場は河川敷のアシの中。
・事件のほとんどは、週末などの休日に発生。
・どの現場でも、泣く子供の姿などは目撃されていない。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p23)
といった「共通項」があることから、
清水氏は、上記5件の事件は《同一犯による連続した犯行》、
すなわち「北関東連続幼女誘拐殺人事件」であるとの推論を立てた。
「隣接し合う群馬県太田市と栃木県足利市の狭い範囲内で起きた、
幼女を狙った5件の犯罪は同一犯による連続したもの」
という考えに立つ清水潔氏にとって、
1990年5月12日の足利事件(松田真実ちゃん殺害事件)で起訴され
無期懲役囚として千葉刑務所に服役している菅家利和氏の存在は「邪魔」だった。
足利の幼女殺人で菅家氏がクロであることが確実ならば、
氏は1996年7月7日当時は小菅の東京拘置所に収監されていたのだから、
群馬県太田市で横山ゆかりちゃんを誘拐できるはずがなく、
よって、清水氏が説く「北関東連続幼女誘拐殺人事件」は瞬く間に破綻してしまうからだ。
それには必要なことがある―菅家さんをこの事件からまず「排除」することだ。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p71)
このため、清水氏は、菅家利和氏が「冤罪」であり、
「横山ゆかりちゃん誘拐事件の犯人=足利事件の真犯人」
であることを立証すべく、
1990年5月12日(土)午後6時30分頃、栃木県足利市の渡良瀬川河川敷で
「松田真実ちゃんらしき幼女と一緒に歩く不審な中年男性」
を目撃したという、2人の人物にコンタクトを取った。
以下、引用。
そのうちの一人は、渡良瀬川の土手の近くに住む自営業の吉田(仮名)さんだ。
吉田さんは事件のあったその日、一八時過ぎから河川敷にいた。
芝の上にいくつかボールを転がして、ゴルフの練習をしていたという。
 
;「たまたま土手のほうを、ふっと見たんだよ。
そしたら、女の子と手をつないで降りて来る男を見た。
土手の法面を下りてきたんですよ。二人は、手をつないでいましたね」
(中略)
「男は、あんまり若くないね。遠くだから顔までは良く見えない……。
子供は、えーっと……四歳くらいかな。
二人がずーっと行った先に、遺体があったんだからね。
ああ、犯人はあいつだなと思ったよ」
菅家さんの自供内容を詳しく知らない吉田さんは、逮捕されたのは
自分が目撃した男だと信じていた。どんな男だったんですか? と尋ねると、
吉田さんは、うーんと吐き出すように言った。
「はしっこそうな(すばしっこい)男だった。ひょろりとした感じでね。
そう、漫画のルパン三世、あれにそっくりだったんだよ。感じがね」
ルパン三世に似た男。
私は、ひょろりとしたその漫画の登場人物を頭に思い浮かべた。
菅家さんとは似ても似つかない。
脳内のメモ帳に強い筆圧で書き込まれたその名前―「ルパン」―は、
脳内メモの別ページとヒットする。
そうか―ふと思いついて私はバッグからあるものを取りだし、吉田さんに見せた。
吉田さんの反応は、私に確信を抱かせるに充分だった。
男と少女の目撃者はもう一人いた。松本(仮名)さんという主婦だ。
彼女は警察の事情聴取にこう答えていた。
〈子供については 四歳位 身長一〇〇センチ位 体格中肉 赤っぽいスカートで上衣は、
スカートに比べて明るいものを着た女の子だったのです〉
学校で美術の先生をしていたというこの女性は一枚のスケッチ画を残していた。
鉛筆で描かれたモノトーンの絵だ。低い位置に、雲が垂れ下がった空。
左側には遠近感のパースがついた堤防がある。
構図中央には広い芝の上を横切る大小二つの姿。
二人は画面左から、右に向かって歩いている。
大股で歩く男が「ルパン」に似た男であろう。距離があるため顔ははっきりと描かれていない。
男に寄り添うようなスカート姿の少女。二人が向かっている先は、遺体発見現場の方向だ。
(中略)
絵の中の、裾が広がったスカートにじっと目をやった。
〈赤っぽいスカート〉
この少女こそ、真実ちゃんではないのか?
一八時三〇分頃にパチンコ店周辺で最後に目撃された真実ちゃん。
その直後、すぐ裏手の河川敷では赤いスカートの少女が目撃されている……
この線がつながるならば、「ルパン」こそが真犯人と考えるのが自然ではないのか。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p79~81)
松本さんから聞けた当日の状況はこうだった。
薄曇りだった事件当日の夕方、松本さんは幼い子供を渡良瀬川河川敷の公園で遊ばせていた。
近くの芝にはゴルフの練習をしている男性がいた。
「ルパン三世に似ている男」と証言した吉田さんだ。
松本さんはブランコの近くで子供と四つ葉のクローバーを探していた。
ふと視線を上げると、ちょうど雲の隙間からオレンジ色の西日が芝生に差し込む中を、
幼い少女と男が歩いていた。
「女の子が、男の人の前後をちょこちょことついて歩いていたんです。自然な形でね。
散歩してるような雰囲気でした。その子供も、安心してる感じですね。
信頼して、ついていっているような感じで歩いてました」
時間は一八時四〇分くらいだったという。
「男は白っぽい感じの衣服を着ていたと思います。そんなに大柄ではなかったです。
一直線に歩いていく感じですね。川の方に向かって大股で、どんどん歩いてるんですよ。かなり大股でした」
女の子の特徴は、真実ちゃんの当日の服装と一致していた。
「おかっぱ頭で。赤いスカートが目立ってましたね。上はそのスカートよりもう少し薄い色でした……」
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p134~135)
更に、2008年7月27日に日本テレビ系列『真相報道バンキシャ!』で
群馬県太田市で起きた横山ゆかりちゃん誘拐事件における
パチンコ店の防犯カメラに映る不審人物の映像を放送したところ、
清水氏宛に一本のメールが届いたという。
上述の目撃証言者の1人、「主婦の松本(仮名)さん」からだった。
(※この映像は2012年11月に鮮明化されたヴァージョン)
〈拝見しました。ゆかりちゃん事件の犯人と思われる男。
映像とCGで当時の状況がよくわかりました。
(中略)
私が目撃した真実ちゃん事件の犯人らしき男を思い出してみると、
あくまで感想ですが、顔の輪郭や歩いているときの雰囲気がとても似ている気がします。
当時、警察の方に説明をしたり、なんども思い出そうとして繰り返しイメージしてきた犯人像ですので、
かけはなれていることはないと思います〉
意外と言えば意外。
うかつと言えばうかつ。
「ルパン」ではないか。
「足利事件」で吉田さんが「漫画のルパン三世、あれにそっくりだったんだよ」
と言っていた男と「ゆかりちゃん事件」の重要参考人が似ているというのだ。
連続事件と見なすなら、当然想定しておくべきことだった。
松本さんは「足利事件」には関心を持っていたが、
我々の番組を見るまでは「ゆかりちゃん事件」は意識したことがなかったという。
今回初めてサングラスの男の動きを見たことで類似点に気がついたのだ。
松本さんのご主人の「目で見た物を瞬間に記憶する力に優れている」という言葉が
今さらながらに思い出された。
後日、松本さんには日本テレビまでご足労頂き、大きなモニターで改めてサングラスの男の
映像を見てもらい、再確認したが、松本さんの証言は揺るがない。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p156~157)
(※これが主婦の松本さんが日本テレビのモニターでサングラスの男を再確認したときの放送。
1分36秒、渡良瀬川河川敷で証言を始め、2分31秒で「あ!こういうテンポなんですよ」と、
1990年の足利事件で目撃した不審人物と、1996年のゆかりちゃん事件の不審人物が
酷似
している旨を語る)
以上のことから、清水氏は、
・足利事件の真犯人は「ルパン三世」に似た男
・「ルパン」が横山ゆかりちゃん誘拐事件の犯人
であると強く確信した上で、
その真犯人「ルパン」の住所を突き止め、直接コンタクトを取ったと主張した。
そう、そろそろ白状せねばなるまい―。
私は「ルパン」と思われる男を特定していた。
すでに書いたように、事件の調査を開始してから二週間目、
西日差し込む一室で束ねたあの黒いファイル。
それはある男を指し示していた。
その頃はまだ取材前だから、「ルパン」などという呼び方は知らない。
だが、黒いファイルから導かれた「推論」に基づけば、
その男が真犯人であることに矛盾はなかった。
私は「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の取材を進めるとともに、
この男の裏取りも進めていた。確信は深まるばかりだった。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p197)
晩秋の北関東はすでに気温も相当に低かった。
私は「ルパン」の家の近くに立って帰宅を待っていた。
静寂に包まれた闇が広がる住宅街。吐く息も白い。
うっすらと霧が流れる中、やがて小柄なシルエットがすっと玄関に消えるのが見えた。
私は小走りでその家に向かった。
薄暗い街灯の下に現れたのは、写真よりは老けてはいたが、
やはりどこかルパン三世に似た中年男だった。
名乗った上で、過去の事件を取材している記者であることを伝える。
「一八年前の事件について伺いたい」そう言うと、突然の訪問からか男は若干の狼狽を見せた。
菅家さんが収監されているとはいえ、男が真犯人なら逃亡の恐れもある。
取材は迂遠なやりとりで行なうしかなかったが、
まずは九〇年五月一二日、「足利事件」当日のことを男にぶつけてみた。
(中略)
そこまでわかった段階で私は話を変えた。
今度は「横山ゆかりちゃん事件」についてだ。
(中略)
一一キロ離れた二つの現場に出没し、連続事件の犯人として全ての条件を満たす男との会話は、
いろいろな意味で私の心に刻まれた。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p202~204)
そして、更に、清水氏は、
「ルパン」のDNA型を独自に鑑定したところ、
足利事件の被害女児の下着に残されていた
真犯人のDNA型と一致した
旨まで主張したのだ。
以下、引用。
真犯人に迫る証拠もある。
真実ちゃんのシャツだ。そこに残された真犯人のDNA型は、最新式の鑑定法で特定されている。
再鑑定で検出されたDNA型は、一八年目にして浮上した重大な証拠ではないか。
そしてついに、その日は来た。
明滅を始める携帯電話の赤いLEDは、私にいつも嵐の前ぶれを感じさせる。
鬼が出るか、蛇が出るか。
記者の首輪だか必需品だか知らないが、
いつだって鳴ればえいやと取らねばならないのが携帯電話というものだ。
ディスプレイには、私が待ち続けていたある人の名前が浮かび上がっている。
ゆっくりと携帯を開くと、覚悟を決めて耳に押し当てる。
意識して興奮を抑えたような男性の声が響く。司法関係者だ。
かつ、DNA型鑑定のプロフェッショナル。彼は一気にこう囁いた。
「いやー、結果が出たそうです。完全一致だと。ドンピシャだと。同一人物ですよ。
これは大変なことになりますよ……」
今度は「不」のない完全一致―。
携帯電話を握りしめたまま、私は深い安堵の息をついた。
やっぱりそうだったか……。
私が追い続けてきた「ルパン」と、「足利事件」の真犯人のDNA型が一致した。
高精度のSTR法によって、男だけが持つ「Y染色体」部位はもちろん、
男女のどちらもが持つ「常染色体」まで、その全てが「ルパン」と完全一致したのだ。
そして、MCT118法で言えば、「ルパン」はあの「18-24」型だったのである。
この鑑定法による全ての型の合致確率は、計算上は一〇〇兆人に一人。
地球の人口は約七〇億人。つまり確率計算自体がもはや意味すら持たない。
ドンピシャ。
電話を切った後もその言葉が私の耳に何度も蘇る。
私の「推論」が「真実」へ足をかけた瞬間と言ってよいのだろうか―
積年の疑問の氷解は、時に、恐怖感すら伴う。
私はぞくぞくとした感覚を味わいながら、次の手を考える。
捜査機関に伝えなければならない。
これは、一報道機関が、「スクープ」などと言ってただ流してよい情報ではない。
(清水潔『殺人犯はそこにいる』p207~209)
上記のように、清水氏は、まるで鬼の首を取ったかの如く、やたら興奮気味に、
「ルパン」のDNA型が独自の鑑定によって
足利事件のDNA型試料と一致した“快挙”をドラマチックに綴っている。
だが、しかし、はっきり言って、
清水氏が、“足利事件の真犯人”である「ルパン」を特定した、住居を突き止めて直接会った、
そして「DNA型を独自に鑑定したら完全一致した」なんて、
絶対に有り得ない!
清水潔は確実にウソをついている!
[前回]
足利事件は本当に冤罪なのか? 3 福島万弥ちゃん殺害事件の概要(中編)
追記(2018年1月14日)
日頃より
弊店ブログの連載記事『足利事件は本当に冤罪なのか?』を
ご高覧いただき誠にありがとうございます。
さて、当記事『足利事件は本当に冤罪なのか? 4』の冒頭において
『 【横山ゆかりちゃん事件の犯人=足利事件の真犯人】説の嘘』
に関しては「前編」と「後編」の2回に分けて記述する旨を予告していましたが、
執
の途上、文量が予想以上に多く
2回ではとても書き終えられないことがわかった為、
誠に勝手ながら、急遽、
「前編」「中篇」「後編」の3回に分けて書くことに致しました。
つきましては、今後、適宜、
『 【横山ゆかりちゃん事件の犯人=足利事件の真犯人】説の嘘』シリーズの
の構成を修正いたしますので、続編はもうしばらくお待ちください。
それでは、
連載記事『足利事件は本当に冤罪なのか?』
を、今後とも何卒宜しくお願い致します。
宇都宮義塾
再び追記(2018年3月24日)
日頃より
弊店ブログの連載記事『足利事件は本当に冤罪なのか?』を
ご高覧いただき誠にありがとうございます。
さて、本年1月14日の追記において、
当記事『足利事件は本当に冤罪なのか? 4
【横山ゆかりちゃん事件の犯人=足利事件の真犯人】説の嘘』は
「前編」「中篇」「後編」の3回に分けて書くよう変更する旨を記しましたが、
執筆の途上、3回でも書き終わりそうにないと判断したため、
続編がある記事に関しては、今後、「A」「B」「C」…と、
タイトルにアルファベットを振って書き進めることに致しました。
(『足利事件は本当に冤罪なのか? 4』に限らず、ブログ全般において)
つきましては、各タイトルの該当箇所を急遽変更いたしますので、
何卒、ご了承ください。
それでは、弊店ブログの連載記事
『足利事件は本当に冤罪なのか?』
を、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
宇都宮義塾
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